【VOL.34】書家 紫舟さん

 

 

今回のゲストは、書道界の若きホープ・紫舟さん。NHK大河ドラマ「龍馬伝」などの番組や広告の題字、テレビCM、新聞連載など、年々活躍の舞台を広げています。先月3月23日~28日にそごう神戸店で開催された展覧会「おはよう ありがとう ごめんなさい」展の合間を縫って、インタビューに応じてくださいました。
(左写真:フォトグラファー T.Kurimoto)


 

 


★神戸で書家活動をスタートされたとのことですが、そのきっかけは。
以前、神戸でファッション関係のOLをしていました。しかし感覚的にですが、何かが違うと感じていました。何が違うのかと聞かれると分からないし、どう生きたいのかも分かりませんでしたが、明らかに自分の居場所ではないという感覚はありました。「人生を自分のものにしたい」と思ったのが、転職のきっかけです。

 

 

★すぐに書家を目指そうと?
当時は、書をやめていました。書は6歳から続けていましたが大学進学で地元を離れることをきっかけに一旦筆をおきました。幼少の頃から書の稽古が当たり前のように存在していた日常から、ついに解き放たれたよろこびで、再び真剣に筆をもつ機会はもうないだろうと思い込んでいました。

(写真:そごう神戸店で開催された「おはよう ありがとう ごめんなさい」展)


 

 

★ではOLを辞めてからは。
これからも穏やかに続くであろう自分の人生を自分の手で途絶えさせたため、しばらく、自分の人生をきちんと見つめなおす期間を設けました。自分は何がしたいのか、今後どう生きていきたいか、本当はどんな人生を送りたかったのだろうと自分の内側に問い続け、3カ月後に、ふと「書家になる」ということが分かりました。
(写真:NHK美術番組「美の壺」題字)

 

 

★書に対する思いを再確認したとか…。
6歳で、この世に生を受け成すべきことの1つに出合いました。そこから、そのことを私自身が人生の中で引き受ける覚悟ができるまで、20年かかったのだと思います。

 

 

★最初のお仕事は。
神戸にある照明会社「kirei」のロゴでした。色墨を使って、アルファベットで書きました。有り難い気持ち一杯で、スタートをきりました。


 

 

★その後、奈良へ行かれたということですが。
奈良は今でも墨の90%以上生産し、神社仏閣も多く書の道具が集まっています。
また、世界遺産や国宝があちこちにあり、人間国宝や日本伝統美の匠の中で、書に必要な日本の伝統的な視覚的なバランス感覚を学んでいました。

 

 

★奈良で3年、そして東京ですね。
大好きな街、神戸も奈良での夢を追う暮らしの中で、その時がやってきたという感覚は確かにありました。例えば、大好きな洋服があって毎日着ていたいけれど、ある日突然体が入らなくなっていた…、タイミングが来たのだと思いました。(写真:NHK大河ドラマ「龍馬伝」題字)

 

 

★タイミングや方向性が“感覚的”に分かるんですね?
書家になることも私が決めたわけではなく、そう“分かって”からは、自分の内側を見つめるという時間を大切にしています。自分自身に答えを問う、教えてもらう、そういうことが以前よりもできるようになったような気がします。


 

 

 

★あらかじめ“答え”が用意されているという…。
もちろん本とか、外にもたくさん答えはあると思いますが、自分のことは芯となる自分が一番よく知っているのかもしれませんね。

 

 

★仕事をするうえで一番大事にしていることは。
人を大切にする。

 

★生活の中で、書に影響を与えるものはありますか。
まだ見たことのない新しいもの…、例えば、建築や技術、手法などに刺激を受けています。
(写真:フォトグラファー 井出恒雄)

 

 

 

★書を書くときの精神状態は?
集中力を一気に高めることは幼少のころから書をしているので自然と苦なくできると思います。リラックスした状態で集中しています。感情がどちらかにぶれていたり、ニュートラルではない状態にあるとき、また元気が足りないときは、よくないようです。リラックスして自然体で生み出されるものが、一番いいものだと今は思っています。
(右写真:スズキ「アルト」TVCM)

 

★やりがいを感じることは?
自分が生涯で成すべきことのひとつに携われ、情熱を傾けられていることは、どうあれ感謝すべきことで幸せなことだと思っています。

 

 

★うまくいかないときの気持ちの切り替え方はありますか。
ないです。落ち込んでいます(笑)。泣いて、ふさぎ込んだりします。できるだけそうならないように運動をして体力をつけるようにしています。体力がつくと、積極的で陽気になり踏ん張りが効くような気がします。


 

★趣味はありますか。
日本の伝統美を勉強することですね。例えば、京都の名工のところへ行ったり、人間国宝の方の話を聞いたり。そこで一緒に最初から最後までの行程を作らせていただき学んでいます。 
(左写真:「夏の終わりの夕日と風」)

 

 

★これからの希望は。
Smile&Relax

 

 

★一番、感動するものは。
やはり人や、その気持ちでしょうね。どうあれ、人は美しい、ですから。

 

 

★最後に、紫舟さんが思う神戸の魅力は。
神戸はその街を愛する人たちの力が、人をひきつける魅力になっていると思います。以前は中央区に住んでいましたので、よく北野を散歩していましたね。早起きして、会社に行く前に歩いていました。楽しい思い出ですね。


 

 

紫舟 (シシュー)
書道家。六歳から書を始める。書の本場奈良で三年間研鑽を積みのち東京へ。
NHK大河ドラマ「龍馬伝」をはじめ、ハリウッド映画「エアベンダー」やsuzukiアルトCMなどに作品を提供。朝日新聞や読売新聞でも長く書の連載をもつ。海外では「パリコレ」への作品展示や国際会議での招待公演、国立現代美術館での展示など幅広く活動。書「龍馬伝」で第五回手島右卿賞を受賞。
公式サイト http://www.e-sisyu.com/

 

 

書家 紫舟さんのインタビューはこれで終わりです。

 


 

取材を終えて
短時間のインタビューでは到底たどり着けない“深遠な湖”をたたえているかのような紫舟さん。深く聞いてみたいことは山ほどありましたが、その作品にすべての“答え”が用意されているのかもしれません。これから切り開いてゆくであろう、新しい書の世界がますます楽しみです。…。

 

取材日:2011年3月27日
市内在住ライター。暮らしの中で接するあらゆる人の話に、ひっそりと息づく小さな真理。そんな“人生の知恵”に励まされ、癒される毎日です。
インタビュアー:中山 純子