【VOL.31】デザイナー 岡本 啓子さん No.2

引き続き、ニットデザイナーの岡本啓子さんにお話をお伺いします。NHK「おしゃれ工房」や編み物の本で紹介した雑貨や服は、「スパイスが効いていてかわいい!」と大好評。
こだわりや手作りへの思いを語っていただきました。

 

 

★ニットというと、いわゆる“毛糸”というイメージですが…。
今は面白い糸がたくさんあるんですよ、普通にはなかなか売っていませんが。輸入しているメーカーはありますけど、単価がどうしても高くなるんですね。その点、私は個人なので、少しのリスクで仕入れられます。
例えば、これ。同間隔で金色のチェーンが垂れ下がってて面白いでしょ。こっちは今年のヒットなんだけど、小さな花が付いています。これを透け透けに編むといい感じ。バッグを編んだら、20年代のフィッツジェラルドの「華麗なるギャッツビー」に出てきそうなバッグになりそう。

 

 

★糸がイマジネーションの源なんですね。
そうですね。糸は何でも好き。前は自分で染めて作ってました。その時、その時にはまる糸ってありますね。
これは糸屋さんにオーダーして作ってもらった糸です。何回か作ったらもうイヤと言われましたけど(笑)。採算が合わないと。どうしても、凝ってしまうんですよね。
ビーズやスパンコールを糸に入れているのとか、ドット柄のシフォン素材の糸とか…。昔はこういったファンシー系の糸は少なかったんですが、今は本当に多種多様です。
気に入ったら、あまり考えないで注文しちゃうんですよね。アシスタントに「もう置くところないから止めてください」と言われるんですけど(笑)。

 

 

★やはり、高価なものですか。
例えば、この花のついた糸。ローゲージというざっくりした編み方だと、普通だと300グラム必要なのが100グラムで済んだりします。
このチュニックだと120グラムくらい。細かい話ですが1グラム26円とすると、3,000円くらい。いい素材使って、手作りしたもは、愛着が違うと思いますよ。 
NHKの「おしゃれ工房」にも何回か出させていただいてますが、収録のとき着ていた服を見て、オーダーが結構来たりします。全国ネットなので、各地から来ますね。
他にも、着物の裏を細く裂いて編んだりとか、スエードや革の糸を編み込んだりとか。売り物だと、洗濯方法も考えないといけませんが。 

 

 

★手編みの世界にもトレンドはありますか。
私の中ではあります。
今、私が気に入っているのは、先ほどのファンシーヤーン(変わり糸)で編むこと。すごく時間をかけて細かく編みこんでいくよりは、ファンシーヤーンで糸の面白さを出して、ローゲージで編んで軽く羽織る…というのが今の時代の空気に合ってるかな。
糸を無駄にしたくないので、残ったらコサージュやナローマフラーを編んだり。それと今は、テープ使いにはまってますね。ちょっとテープでアレンジしたりすると、全然違うものになりますよ。

 

 

★異素材の組み合わせですね。
何年か前に、ミラノで展示会をしたんです。普通のニットだったら、向こうが本場だから面白くない。当時はシノワーズにしてもそうだし、アジアっぽいものが流行だったんです。それで、ジャパネスクで着物を使ってやろうと。一部分を使うとか、生地をはめ込んで使うとか。「着物とニット」をテーマにしてやったんですけど、結構受けて。
大正時代くらいの着物は華やかで面白いんですね。そのまま服にアレンジすると、ちょっと薄っぺらいものになってしまいますが、ニットと合わせると重みが出ます。表情も豊かになりますし。


 

 

 

★初心者でもできる簡単なアレンジは。
面白い糸があれば、革ひもとよりあわせて、ボタンやテープをコラージュして、ネックレスを作ったり。この程度でしたら、ワークショップで30分くらいで作れます。シャツに合わせるだけでかわいい。アクセサリーは割りと簡単。自分の気に入った素材を組み合わせて作ればOK。何でもアリです。

 

 

★仕事で、特に好きなことは何ですか。
全部好きですけど…、やっぱりデザイン考えることですね。
糸と、編地にしたときの表情はだいぶ違うこともあるのですが、私たちは仕上がりの状態がわかるので、糸のよさを引き出したり、逆に違った表情のものに仕上げたり。
素材を見て、イマジネーションをふくらませるのは、楽しいですね。

 

 

★やりがいや、仕事を通して得たものは。
仕事を通じて、いろんな人に出会えることは、すごくいい。つながりがどんどん発展していきますし。
仕事に限らず、人生観ですけど、バランスが大事だと感じます。ネガティブなことがあっても、考え方を変えてポジティブに変換する。失敗しても、そこにプラスアルファすることですごく面白いものができたり。失敗をステップアップの材料にするというか。
今まで仕事をしてきて、それは感じますね。失敗は生かせると考えれば、人生が楽しくなりますし。ダメならダメでいい、次またチャレンジすればって。大変なことがあっても、最後は「面白かったね」で終わってますね(笑)。


 

 

 

★手作りのよさとは?
若い人はちょっとしたものなら作るけど、もっと大きなものは作れなくなってます。昔は手作りしたものも、今は何でも安いですから買えば終わりというところがある。でも買ったものと、作ったものの差は絶対にあります。
教室には、アパレルメーカーのデザイナーやパタンナーの人も習いに来ています。自社のものを買えば安いけど、わざわざ作る。思い描くものを作れるし、やはり大量生産のものとは素材が違うといいます。
若い人にどんどん手仕事をやってほしいですけどね、難しいですね。時間もないでしょ。昔は娯楽も少なかったから時間もありましたし…、今は世知辛いというか。

 

 

★どうしたら広がるのでしょうか。
基本的に、ものづくりは楽しいものです。その楽しさが分かったら、はまると思うんですけど…。知らない、分からないからやらない。何でもそうだと思いますけど、一度やってみて面白さを体験すれば世界が広がると思いますよ。誰かに褒められたら、また作ってみよかなと思うかもしれませんし。まず1つ、きちっと完成させることができれば、ステップアップできると思います。


 

 

 

★「好き」を仕事にしたい人にアドバイスがあれば。
好きなことが仕事になったら幸せですよね、それなりに大変ですけど。人生楽しいですよ。
あきらめないことです。長く続けたら、絶対何らかの形になるので。うまくいかなかったら、やめようかなと思ってしまいますが、途中で投げ出さないで頑張ってほしいですね。「継続は力なり」です。

 

 

★作品や講習を通じて伝えたいことは。
大人のおしゃれな女性というイメージを発信しているつもりです。おしゃれなものを作ってほしいし、楽しんでほしいですね。 
生徒さんは皆さん長く続けられますね。自分で教室を開いたり、デザインをされている方もいます。趣味ももちろんいいんですけど、やる気のある人には仕事にできるようにがんばりなさいと言っています。 

 



★趣味はありますか?
仕事が趣味ですけど(笑)、料理作るのも好き。発想の作業なので、「これをこれをあわせたらどうかな」といった点で通じるところはありますね。
お昼は生徒さんも一緒に食べるので、20人分くらいを作るんですよ。皆さん遠いところから来ているので、一日作業なんです。機械編みを習うために、今日も東京から2人、2泊3日で来られてますし。そうなると夜もうちで一緒に食べたり。一応教室は10時から6時ですけど、あまり関係なく、教室というよりサロン的な感じ。 

 



★神戸で生まれ育ったことが影響していることはありますか。
はっきりと言い切れることはありませんが…。でも神戸でよかったですね。私は須磨なので、海と山がいつも身近にありましたし。
このごろは流行も共通している部分が多いですけど、やっぱり神戸の人はおしゃれ。若い人も上品かな。

 

 

 

★今後の予定は。
去年の秋くらいから、ずっとイベント続きなんです。9月13日にターミナルコレクションをやって、9月末にうめだ阪急でイベントやったら、講習会はありますけど、ちょっと小休止して頭をまとめようかと。新しいアイデアのためにも、頭を整理したいですね。
そして、若い人が育つような環境を作っていければと思っています。

 

 

岡本啓子さんが主催する「アトリエ K’s K」http://atelier-ksk.com 

 

 

岡本啓子さんの本
「大人の冬ニット」雄鷄社
「私のために編むデザイン・ニット」雄鷄社


 

 

 

おわり
デザイナー 岡本 啓子さんのインタビューはこれで終わりです。

 


 

 

取材を終えて
見せていただいた作品はセンスが光るものばかり。ショールやアクセサリーといった雑貨ものは、「かわい~、これなら作ってみたい♪」とそそられる魅力が。教室を拝見させてもらうと、皆さん忙しく手を動かしながらも、ホントに楽しそう!「またぜひ来てくださいね~」と笑顔で見送ってくださった岡本さん、楽しいひとときを、ありがとうございました。

 

取材日:2009年8月8日
市内在住ライター。暮らしの中で接するあらゆる人の話に、ひっそりと息づく小さな真理。そんな“人生の知恵”に励まされ、癒される毎日です。
インタビュアー:中山 純子