【VOL.30】ジャズピアニスト 小曽根 実さん No.2

 

 

引き続き、ジャズピアニストの小曽根実さんにお話をお伺いします。神戸ジャズCITY委員会長を務めるなど、ジャズのPRや若手育成などにも尽力され、神戸ジャズ界になくてはならない存在。ジャズに対する思いやご家族のことなど、ざっくばらんにお話しいただきました。

 

 

★ご自身のレパートリーは、どのくらいあるんですか。
6000曲くらいある。まあ年いってるから、1曲聴いたら2曲くらいこぼれようけどね(笑)。僕らはメロディーが出たら、コードは全部出てくるから。楽譜なしでね。生徒はびっくりしますけど。師匠なんでそんなに覚えてるんですかって(笑)。
そもそも楽譜は目から入るもの。目から入るとまず脳に入って、手にくる。1年弾かないと忘れるんだけど、耳で聞いて覚えたのは、不思議と1年2年経っても思い出すんです。
もともと楽譜読めなかったんだから、今も初見は弱いですよ。編曲は全部自分で書くけどね。楽譜はあくまで参考資料。楽譜に英語で「ブライト」って書いてるのを、日本語だと「明るく快活に」ってあるけど、作曲者はどんな気持ちで作ってのか分からんのにね(笑)。一応明るく弾けばいいんやなということだけで。それをどんな風に表現するか。プレイヤーは音の料理人で、食べる人はお客。僕はそういう気持ちでやっている。
例えばボサノバのアントニオ・カルロス・ジョビンが作ったマイナー(短調)の曲でも、それを明るくスイングにしてみようかって。それが料理人の腕やね。全然よくない場合もある、なんやこれって。でもそれはそれでいい。

 

★ジャズの醍醐味はアレンジ、アドリブなんですね。
アドリブは不可欠。うちの音楽学校の生徒も、僕のところに付く人は半プロで名古屋や島根、静岡からも来てるけど、アドリブが難しいという。でもそんなん、最初からできるもんじゃない、何べんも繰り返すしかない。
後は、センスとハート。ジャズはメロディーよりもリズムやから、自分の身体から湧き出てくるリズムが大切。メロディー間違っても怒らないけど、リズム間違ったら怒るで(笑)。
自分のスタイルが大事。僕のも「小曽根節」やと言われてきた。やっぱり癖があるんやね。
自分のカラーで曲をどんなふうに料理したらいいか、毎回考えてる。それは、生涯終わりはないね。だから楽しい。


 

 

 

★演奏で大事にしていることは?
手を抜かないこと。コンサートは自分のコンサートを聞きに来てくれる人だけど、ライブハウスには無責任に聞きに来ている人も多い、誘われてきたとか。演奏しているときにガヤガヤなることあるけど、僕は耳がこっち向いているというのがわかる。その人たちのために、一生懸命にやる。
手を抜こうと思ったら抜けますよ、たまに寝てることある。それは冗談だけど(笑)。
でもちょっと手を抜いたら、聞く人が聞けばわかる。そうなったら面白くないしね。
この間も日本丸でコンサートやったけど、僕を目当てにみなさん来てくれるわけだから真剣です。最後はスタンディングオベーションでね。このごろ日本人でもスタンディングオベーションやってるけど、いい傾向やね。

 

 

★お好きなプレイヤーはいますか?
時代によって変わるけど、今はオスカー・ピーターソン。スウィング系で、テクニックのある人が好きやね。
ビル・エヴァンスもいいね、あの人のピアノはビューティフル。後は、ジョージ・シェアリング、テディ・ウィルソンは、ピアニストとして好きなタイプ。
みんなスイングやね、完全に。


 

 

 

★日本人ではいかがですか。
ベストプレイヤーは、小曽根真。自分の息子というの抜きにして、あれはすごいわ。クラシックとジャズ両方できるし、トップやで。オーケストラとジャズピアノを融合しているのは他にいない。
宮崎国際音楽祭のクラシックコンサートでも、シャルル・デュトワの指揮で120~130人のオーケストラと一緒にモーツアルトやってたとき、アンコールでいきなりアドリブ入れて成功させてた。アドリブラスト1分でオーケストラ全員に入るタイミングを知らせたコンサートマスターも偉かった(笑)。後から聞くと、「悪いことしたな~思て」と笑ってたけどね。
それができるのも自分に自信があるからやろうね。今48だけど、50代になって、どんなふうに変化していくんやろか、それも楽しみ。

 

 

★真さんには、ピアノを教えたりされたんですか?
特に何も。真も独学。真が3つか4つのころ、コンポをいじられないように、あいつ用の小さいプレイヤーを買ってやったことがあったんやけど、それで聞いたメロディーをハモンドオルガンでそのまんまいきなり弾いてびっくりしたことがあった。オルガンには鍵をかけていたのに、見よう見まねで開けて自分でスイッチ入れて…。
しかも、Fの曲なのに、F#で弾いてる。プレイヤーの回転がちょっと速かったから、そう聞こえてたらしい。そんな小さい時分に、F#のキーからいきなり弾くのには驚いたね。語り草になってます。

 

 

★ご家族で一緒に演奏しますか。
やるよ、一緒に。真ともデュオコンサートしたりね、この2年ほどはやってないけど。
啓とは、ついこの間一緒にコンサートやった。家族仲はいいよ、バリバリ(笑)。
大震災のときも、2人と一緒にチャリティーコンサートをやった。自分の持ち家は全部つぶれて、残ったのは賃貸だけだったけど…。
それでも「神戸ジャズは健在なり」といって、18カ所くらいコンサートやったんです。ミュージシャンも被害者だから、「交通費だけでも渡したって」って言って。
集まった500万くらいを、神戸市やそのほかの自治体、合わせて20数カ所分送りました。僕だけじゃなく、みんなの協力で実現できたコンサートだったね。

 

 

★これからのご予定は…。
来年6月には、上海万博に行きます。クインテッドとボーカルで。神戸代表ということは日本代表やからね、ベスト尽くすしかない。
中国とは9年前から交流しててね。9年前に行ったとき、僕ら平均年齢60数歳で行ったけど、向こうのバンドは平均年齢72.6歳やった。トランペットとドラムが、最高齢82歳で。
僕も今年75やけど、このあいだ神戸市から表彰もろてんでー(笑)。ほかにも6年のあいだに5つも。ええ年になった証拠やなあ(笑)。


★まだまだ現役でいらっしゃいますが、夢はありますか?
なんやろな(笑)。ストリングスともやったし…、生涯現役かな。
僕はたまたま若い頃、テレビに世界に首つっこんで有名になったけど、僕らより先輩はたくさんいる。できる限り、続けていきたいね。それが目標。

 

 

★ジャズをやりたいなと思ってる人にアドバイスを。
楽しみなさい。ヘタはヘタなりに、いくらでも楽しめる。
初めての子に言うのは「自分でメロディ探してひいてみ」ということ。ちょうちょでもいい。音楽はあくまで耳から入るもんだから、楽譜見んと「耳育てろ」て。いろんな人の音楽を聞いてほしいね。
習うのは、線路を引いてもらうようなもの。「僕の後をついてくるな、ポイントを切り替えて、別の線路を引きなさい」と言ってます。後ろをついてきても、いつまでたっても追い越せないから。
そうこうしているうちに、追い越されたやつ、ようけおるで。これは手に負えんなて(笑)。若い人にがんばってもらいたいね。


 

 

●小曽根実さんの音楽教室
オゾネミュージックスクール

 

 

おわり
ジャズピアニスト 小曽根実さんのインタビューはこれで終わりです。

 


 

 

■取材を終えて

戦中・戦後の激動の時代から現在まで、時代とともにドラマチックな人生を歩まれてきた小曽根さん。自分に正直に、前向きに生きることが大事だと改めて気付かされたインタビューでした。もちろん、生粋の神戸っ子らしく、とってもダンディ! 楽しいひとときをありがとうございました。

 

取材日:2009年7月22日

市内在住ライター。暮らしの中で接するあらゆる人の話に、ひっそりと息づく小さな真理。そんな“人生の知恵”に励まされ、癒される毎日です。
インタビュアー:中山 純子