【VOL.28】サンバダンサー 南原 紀子さん No.2

 

 

サンバインストラクターでサンバチーム「G.R.E.S SOL NASCENTE」(ソウ・ナッセンチ)」を率いる南原紀子さん第2弾。ブラジルの国民的行事・リオのカーニバルでパシスタ(ソロダンサー)を射止めたお話などを伺いました。

 

 

★リオのカーニバルに出られたんですよね。

最初に出たのはサンパウロのカーニバルで98年。行くのも大変で不便な国やし、もう行かんとこと思ったんですけど(笑)。次は2003年の秋に行きました。5年後ですけど、自分が教える立場になって、はたして本場リオで通じるのかなと思ったんです。度胸試しというか、どこまで通用するのかと。勉強をかねて半年間、いました。

 

 

★半年の間、何をされてましたか?

遊んでました(笑)。というのも、自分が習う立場だったので。 ソロは踊れて当たり前。腕試しするのは「ベイジャ・フロール」という実力のある大きなチームに決めました。カーニバルの曲のCDは毎年出ていて日本でも買えるんですけど、そのチームの曲調や華やかな踊りが好きだったので。 前年も優勝していて敷居が高かったんですけど、チャレンジするならファンのチームにしようと。地元のブラジルの友達に相談したら「いやあそれ難しいよ」と言われたんですが、練習に連れて行ってもらって。観客の中から引っ張りだされて踊ったんですね。そうしたら入れてもらえたんです。

 

 

★そこでソロダンサーに決まったんですね。

それが2003年の10月。カーニバルは2月なので、それからは毎週練習。他のメンバーと違って外国人なので、信頼づくりが一番大切で。今は友達ですけど、そのときは知らない人ばっかり。「その人たちよりも目立たないと」って、すごい練習を頑張ったんです。でもカーニバルの衣装をもらうまでは、不安でいっぱいでしたね。

 

 

★「ベイジャ・フロール」はどんなチーム?

大きくて華やか。まずショーメンバーというコアメンバーがいて、次にカーニバルに出るメンバーがいます。お金払えば出られるというパートもあります。毎週練習しているメンバーだけでも、2千人はいると思います。 ソロダンサーのパートは、20~30人。あとは演奏する人が300人くらい、本番は「ベイジャ・フロール」だけでも5千人くらいになります。それが何チームもあるんです。

 

 

★規模が違いますね。本番はいかがでしたか。

実は衣装もらいに行ったときタイミングが悪くって…。ブラジル人って関西人みたいに、ぱ~っと前に割り込むから、いつの間にか順番後ろに回ってて、自分のブラがなかったんですよ(笑)。もう一つ腰飾りがあって、これでどうにかしてくれと(笑)。これ、カーニバルの前日の話なんです。せっかく夢見た晴れ舞台で、それゃないやろ!って思いましたよ。ホントに。最悪なパターンだと。でも、そのブラのデザインを覚えて帰って、人よりもちょっと豪華に作りました。徹夜で! 無事カーニバルに出れた時は、知り合いの新聞記者のルートで日本のいろんな新聞に取り上げていただきました。それが2004年のカーニバルですね。


 

 

 

★それからは毎年?

次の2005年は、主人も仕事を辞めて一緒に半年行きました。演奏をやる「バテリア」ですが彼も「ベイジャ・フロール」が好きだったので。それぞれのパートで出ました。2006年は、もうキリつけようと思ったんですけど抑えられず(笑)、1カ月だけ。ソロダンサーは大体みんな10代。東洋人は若く見られるとはいえ30歳だったし、1カ月前で出させてというのは割のいい話。自分自身楽しくないので、出るのはあきらめてました。練習を見には行ってましたが。
それでカーニバルを見学してたら、チームが近づいてきて、仲のよかった同じパートの子が「ノリコ~!あなたの衣装預かっているのよ~」と。「え~出られたの~!」って(笑)。ギリギリになって出場をあきらめた子がいて、「それならこの衣装をノリコに!」と、探してくれてたらしいんです。でもその気持ちがうれしくて。カーニバル後の、地元のパレードに出させてもらいました。 翌年の2007年は行かなかったんですが、2008年は4カ月だけ行って、苦労なく出られるようになったんですね。

 

 

★若い子の中、年齢的にもがんばって(笑)。

ホンマ、お母さんみたいですよ(笑)。チームは企業がスポンサーになってて、チーム内のスタジオで子どもたちにタダでダンスを教えてるんですね。そういう子が7歳とか8歳とかで出場したりもするので。

 

 

★リオのサンバで得たものは。

日本だと先生の立場で、全体構成を考えて見てしまうし、心配が多くて。でもブラジルでは、1ダンサーの気持ちで楽しめる。それが大きいですね。 「君はベイジャ・フロールを代表するダンサーだから」と言われると、ワーッと涙が出そうになります。「今年は来られないの?」とかメールくれるんですよね。そのたびにサウダージ…、日本の曲でもありましたけど、あれポルトガル語で懐かしいような切ないような思いを表す単語なんです。で、心がそのサウダージ状態(笑)。


 

 

 

★ポルトガル語は?

なんとか独学で。98年に行くまでは普通の仕事…、受付業務とかしてたんですけど。仕事しながら合間見てひたすら単語覚えて。会話は次に半年行ったときに上達しましたね。とにかく間違ってもいいやと話してたら、なんとかできるようになって。 使わないとすぐに忘れるので、今はメールや電話で。昔は分からなかった曲の歌詞も、今となっては「こんなこと言うとったんや~」と思いながら聞いてます。

 

 

★サンバの曲では、どんなことが表現されるんですか?

リオのカーニバルの曲は、2年くらい前から各チームでテーマを決めて、それを表現するんです。曲もプロの作詞作曲家が応募して、100曲とかの中から厳選して1曲が決まるんですね。例えばテーマが日本だったらそれっぽいメッセージや歴史が入ったり。 歌謡曲は、哀愁ただようメロディーラインが多いですね、日本の演歌みたいに。あとはラブソング。「海辺で黒髪のかわいい君を見つけた~」みたいな(笑)。ファンクやヒップホップのニュアンスが入った曲も。サンバ自体もともと、アフリカのリズムと、ヨーロッパの音楽文化が交じり合ってできたものなので、融合を重ねて変わってきている部分はありますね。

 

 

★今後の夢は。

そうですね…、悩んでいる部分もあって。個人的には、ブラジルに行き続けるのもひとつの手かなと思ったりもする一方で、登竜門的なものがなくなった今、楽しむためだけに行っていていいのかと。仕事も休まないといけないし。だから今年は自粛したんですけど、来年どうなるか(笑)。チームに関しては、少しずつテーマ表現もできるようになってきているんですが、今後の目標としては、レベルを濃くしていきたいですね。いいものを作るには準備も努力も必要だけど、面倒くさいものと思わず、情熱をもっと取り入れていけたら。自分たちが熱くならないと伝わらないと思うし。ソウ・ナッセンチのメンバーたちにもっともっとサンバを楽しんでほしいです。


 

 

 

★何か始めたい人にメッセージを。

きっかけは何でもいいと思うんです。例えばサンバだったら、華やかな衣装が着てみたいとか、軽い理由でもいいからまずやってみてほしい。難しいとか言っても、やってみないのに分からない。これは何にでもあてはまると思います。 あと、大人になってから友達ってなかなかできないじゃないですか。学生時代からの友達も環境が変わったら疎遠になっていくと思うんですけど、何か始めると、その趣味を通じて友達ができます。好きなことを語れる仲間は長続きすると思いますよ。

 

 

★ご主人との出会いもサンバを通じて?

前のチームに、ゲストで太鼓をたたきに来たんです。結婚して7年半ですけど、その前に9年くらいお付き合いしてて。サンバ始めたころから知ってますが2人ともサンバ暦25年。もう四半世紀やってるんです(笑)。彼はパーカッションを独学でやってきて、今はチームのバテリア(打楽器隊)に無償で教えていますけど、普段はサラリーマンです。

 

 

★長らく仲良く続いている理由は?

趣味でつながっているぶん、分かってくれる部分が大きい。2人ともマニアなんですよ(笑)。オタクの範囲までいっちゃうと、他の人に通じない部分ってあるんですね。サンバ用語やステージ構成とか、深いところまで話し合あえる存在。チームでも言いにくいことを彼に言ってもらったり(笑)。すごく助かってます。

 

 

★コーベルに参加される方に、アドバイスを。

日本は音楽にのって踊るという文化がないので、間違ったらはずかしいと思ってしまう人が多いのですが…。そういうのは考えずに、肩の力を抜いて楽しんでほしいです。そのために、まず派手な衣装でパフォーマンスして、皆さんの緊張を解きたいなと思ってます。 基本やステップにこだわらず、見たまんま感じたまんま、入ってきてください。

 

 

★サンバに興味が出てきたら?

いつでも「ソウ・ナッセンチ」の門を叩いてください! 誰でも今日が一番若いので、やりたいこと・始めたいことにはまず挑戦してみてほしいですね。


 

 

 

~最後にちょっと一問一答~

★普段のファッション

カジュアル。ボーイッシュっぽいかな。コートじゃなくて、ダウンジャケットとか。Gパンが多いですね。

 

★よくいくお店

ここ「ブラジリアーノ」。肉食なので(笑)。

 

★魅力的な女性像

スッピンでも笑顔。人を選ばず、話ができて、笑える人。

 

★ストレス解消法

サンバ(笑)。そのまま? じゃあ、ブラジルでのサンバ。リオで踊りまくることです。

 

★元気の源

好きなことをする。30歳過ぎたら嫌なことはやらないって決めたんです。気分が乗らないことは、無理しない。

 

★好きな言葉

有言実行。自分の好きなことを仕事にもさせてもらっているので言えるんだと思います。

 

★カップルがうまくいく秘訣

「こんな人」といい意味で割り切ること。ありがとう、ごめんなさい、を素直に言うこと。

 

 

●「G.R.E.S SOL NASCENTE」(ソウ・ナッセンチ)HP

http://www.solnascente.jp
プロフィールやスケジュールはここでチェック!

 

撮影協力/ブラジリアーノ

ブラジル名物「シュラスコ」の専門店。バイキングで思う存分堪能できます。
http://www.kobe-mosaic.co.jp/floorguide/dining/world_dinning/3f-12.html

 

 

>>終わり
サンバダンサー・南原 紀子さんのインタビューはこれで終わりです。

 


 

 

取材を終えて

目を輝かせながらリオの話をしてくれる南原さんからは「サンバに首っ丈!」オーラがひしひしと感じられました。一方でご主人とは「1週間お疲れ様でした」と毎週必ず声を掛け合っているとか。情熱と思いやりを兼ね備えているとっても素敵な女性。今年の神戸まつりが楽しみです!

 

取材日:2009年2月2日

市内在住ライター。暮らしの中で接するあらゆる人の話に、ひっそりと息づく小さな真理。そんな“人生の知恵”に励まされ、癒される毎日です。
インタビュアー:中山 純子