【VOL.25】ダンサー成澤幾波子さん

 

 

今回のゲストは、イタリアのコンテンポラリーダンスカンパニー「Aterballetto(アテルバレット)」で唯一のアジア人メンバーとして活躍している成澤幾波子さん。神戸ファッションウィーク2008A/Wのイベント「Coppolart Night」、「Commix Arts 2008」でしなやかな踊りを披露したばかり。前編ではダンス人生とその魅力についてお聞きしました。

 

 

★今回、神戸ファッションウイークに参加されたんですよね。お疲れ様でした。いかがでしたか。

まず会場の雰囲気がよかったです。「Coppolart Night(コッポラートナイト)」というイベント(シチリアの帽子ブランド、ラ・コッポラ・ストルタ日本上陸1周年記念イベント)で、みなさん好きな帽子をかぶっていらしてました。おしゃれを楽しんでいる感じで、和気あいあいとしていて…。今回は友人を介してイタリアのコッポラの方と知り合って、その関係で参加することになりました。わたしも帽子が大好きなので、そこで躍らせてもらえるというのがすごくうれしかったです。

写真は「Coppolart Night」の時のもの。


 

 

 

★現在、イタリアでコンテンポラリーダンザーとして活躍されているんですよね。

「アテルバレット」というダンスカンパニーに所属して活動しています。ちょうど3年目が終わるところで、9月で4年目に入ります。

 

 

★「コンテンポラリーダンス」とはどのようなものですか。

一言でいうと現代的なもの…、バレエも総合芸術ですが多分、コンテンポラリーのほうがその度合いが大きいと思います。古典ではなく、振付家が生きているので、その人の演出が大きく反映されます。舞台美術、舞台照明、音楽、衣装、それにダンサーの表現が加わった、コラボレーションです。ストーリーがあるものも、ないものもあります。


 

 

 

★さかのぼってお聞きしたいのですが、そもそもダンスを始めたのは…。

4歳からクラシックバレエを習っていたんです。でもお絵かき教室やテニスもやっていたので、最初は習い事の一つ。もちろんスパルタということはなく、週1回、漠然とやってました。
でもだんだんと踊ることが本当に好きになって、中高生のころからプロでやっていけたら…と思い始めて、練習を真剣にするようになりました。やっぱり本場のヨーロッパで勉強したいと思って15歳のときイギリスに2週間サマースクールという形で短期留学しました。それが刺激的だったんですね(笑)同じくらいの年齢の子たちを見て、まだまだ足りないなと思って練習を重ねました。18歳になる前にオーディションを受けて、フランスに2年留学しました。
その後、バレエ団のオーディション活動をしたんですけどやはり難しくて…、でも日本に帰るにはふんぎりがつかない。じゃあ思い切ってコンテンポリーダンスに挑戦してみようと、専門の学校があると聞いてオランダの大学に1年行きました。


 

 

 

★プロとしてやっていくきっかけになったのは?

その学校に、今所属しているダンスカンパニーのマウロ・ビゴンゼッティという振付家が、ちょうど男の子の作品を作るために来ていたんです。そこでわたしがリハーサルや練習しているところを見ていて、声をかけてくださったんです。

 

 

★「アテルバレッド」に入ってからはどのような活動を?

1年目は、既存作品のレパートリーを覚えました。ツアー公演が多いカンパニーなので。ちょうど同期も多かったので、一緒に。メンバーは今、みんなで18人です。半分はイタリア人、4分の1がフランス人、4分の1が非ユーロ圏のメンバーですが、アジア圏ではわたし1人です。
公演は、イタリア国内が半分、後は国外公演ですね。北欧やアジアのダンスフェスティバルに参加することもあります。作品によってソロやデュエットもありますけど、うちは基本的に全員が参加するので、みんなでツアーを回ります。
公演日数はだいたい年70~80公演くらい。多いときは100公演くらいあるときもありますが。ツアーが多いので移動が大変ですが、みんなけっこう気楽な感じ。公演終わったら観光したりとか(笑)。
年に1~2本、新作に取り組むので、その間は公演はないんですけど


 

 

 

★作品はどのように創り出されるんですか。

振付家はずいぶん前から構成を練ってるようですけど、わたしたちダンザーに話があるのは数ヶ月前ですね。実際、みんなが振り写しに入るのは1ヶ月半前とかですね。それから1カ月かけて準備して初演という形です。
一つの演目は20分~40分のものが多くて、中には1時間くらいのものもあります。「ロミオとジュリエット」は一番長くて、それくらいですね。

 

 

★イタリアでダンサーをしていて、どのように感じますか?

例えば舞台での反応でいうと、イタリア人は伝統的なものが好き。分かりやすくてきれいで、ストーリーが分かりやすくって…という。アンコールも盛り上がってワーッと大きくしてくれます。逆に日本は目が肥えているというか、いろんなものを見ているし、好みも違いますから、いろんな意見があるような気がします。
 うちは振付家が中心のカンパニーで、それにダンサーがついていくという形。イタリアはコンテンポラリーのカンパニー自体がほかのヨーロッパの国に比べたら少なくて、振付家がいるのはうちともう一つくらい。ほかはいろんな振付家のレパートリーをやっているようです。


 

 

 

★他のメンバーとはどういった関係ですか?

グループに分かれたりもせず、みんな仲良しです。平均年齢はわたしくらい、20台半ばですね。私より古株はクラシックバレエでプロとしてやってきて…という人が多くて、私より下は研修生が多いですね。クラシックもしますが、モダンやコンテンポラリーから入ってる人が多いです。
一般的にダンサーはカンパニーを転々とする人が多くて、1~2年くらいで次に行く人も。ダンサー人生を終えるまでに、3~4カ所移籍するのが普通ですね。引退後は振付家になる人もいますが、狭き門なのでリハーサルディレクターやバレエマスターとか、仕切る側に回ったり、先生になったり。フィジオセラピストになる人もいたりします。

 

 

★体だけで表現するのは難しそうですが…、一番苦労するところは?

実はデュエットパートがちょっと苦手。うちの振付家はデュエットが得意で、その分、動きも複雑。手を潜り抜けたり、ねじったり、からんだりするんですが、ウマがあわないと難しい。ちょっとタイミングがずれるとパンチしたりとか(笑)。わたしは172センチなのですが、イタリア人は意外と小さかったりするので…。

 

 

★踊っているときは、どういう精神状態なんですか?

すごく集中しているときもあるし、今日お昼食べたのが気持ち悪いなあと思ってたりすることもあります(笑)。

 

 

★クラシックバレエを踊っているときと、どう違いますか?

バレエをしていたときは、すごい緊張していたんですね。失敗したらいけないとか、綺麗にみせなきゃとか…。古典バレエは自分も小さいころから見てきているし、自分の中でイメージができあがってたんです。
もコンテンポラリーは、振付家から直接アドバイオスもらえるし、精神が自由な感じ。自分自身でいられるような、居心地のよさがありますね。


 

 

インフォメーション

9月21日まで、神戸ファッション美術館で写真家・野村佐紀子さんが撮り下ろした
「~波動~成澤幾波子」写真展を開催中。

 

 

>>続く
9/16も引き続き、ダンサー成澤 幾波子さんのインタビューをお届けします。

 

 


 

 

インタビューブレイク

長い手足、ピン!と伸びた背筋。オリエンタル・ビューティーを形にしたような成澤さん。写真で見た大人びた印象と違い、ナチュラルで若い(!)ご本人とのギャップにもびっくり。「静」と「動」が共存する、懐の深さを感じました。

 

取材日:2008年8月29日

市内在住ライター。暮らしの中で接するあらゆる人の話に、ひっそりと息づく小さな真理。そんな“人生の知恵”に励まされ、癒される毎日です。
インタビュアー:中山 純子